Medal of Honor―感想&レビュー [PCゲーム]
元祖ミリタリーFPSの代名詞的存在であったMedal of Honorシリーズの最新作であり、シリーズで初めて現代戦を描いた「Medal of Honor（邦題メダル オブ オナー）」をEAからレビュー企画として頂いたので、感想をここにまとめる。なお、PS3版、Xbox360版、PC版が出ているが、今回はPC版を扱っている。内容はほぼ同じだと思うが、一応、違う部分もあると思われるので先に断わっておく。
今までのMOHシリーズでは第二次世界大戦を扱っているものばかりだったが、今回は冒頭でも述べた通り現代での話となっている。舞台はアフガニスタン。プレイヤーは最も危険な任務を遂行したTier1オペレーターの一員となって過酷なミッションに立ち向かう、というのが今作のおおまかな筋だ。
これだけ聞くとありふれた内容に思えるかもしれないが、重要なのはアフガニスタンにおける任務というのが物凄く現実味を出しているところだろう。今までのMOHシリーズというのは、内容が昔の話過ぎて、史実に沿ったシーンでもただの作られたエンターテイメントとして捉えてしまうところがあった。一方で、今作はあくまで「過酷な戦闘を再現したフィクション」と謳っているにも関わらず、ノンフィクション以上に「今現在でも起こっているのかもしれない」というリアルさを感じさせてくれる。正直、このような体験は初めてであり、とても新鮮だった。
この設定が今作最大の魅力だと私は思う。プレイ自体は5時間程度ですぐ終わってしまうし、最後もあっけなく終わったかのように思えた。ただ、このようなことが今この時間にまさに起こっているかもしれないということを考えた瞬間、プレイヤーはそれまでのプレイを回想し、良いストーリーだったと思うだろう。しかもこのゲーム、そこまで誘導するのが上手い。私自身、戦争モノFPSのストーリーで久しぶりに物思いにふけってしまった。
ということで、まずはストーリーの良さを挙げたが、今作は演出にも優れている。そもそも、今作は一つのミッションを様々な部隊の一隊員として見るという設定なので、アクション映画のような派手な演出から狙撃やステルスといった多種多様の演出が行われる。個人的には、派手めな演出が良い意味でゲームっぽくて好きだった。また、シチュエーションが米軍不利な状況で展開されることが多々あったので、ゲームプレイとしては手応えがあり、心情的には燃えることが出来たので非常に楽しめた。残念だったのは音声とのずれ。プレイヤーがとっとと進んでしまっても、味方の文章がスキップされないので、セリフを言うべきタイミングが遅れることが多々あった。
私が嫌いな無限湧きに関しては、今回は許容できるレベルであった。無限湧きを防ぐために敵を倒さず突っ込めば解決するというゲームはあまり好きではないのだが、今回は無理やり突破しようとするとすぐ死んでしまうことと、無限湧き防止の解決法が突破以外の条件だった場面が多く見られたので。
ただ、バグや気になる点は多々。以下に私に起こった出来事を列挙する。
･何もない場所で敵が湧いたのが見えた
･敵がスーーーッと滑って移動
･立てないorしゃがめないバグ
・フラグがたたない（たちにくい？）ゲーム進行バグ
・味方が死なない
･音声及びローカライズ品質
最後の項目に関しては少し補足を。まず音声が聞き取りにくい。特に軍事用語はしっかり聞こえても分からないようなものがあると思うのだが、それに加えて音声が聞き取りにくいとなると救いようがない。しかも字幕がない。私は日本語版を頂いてプレイしたのだが、日本語版は日本語音声のみのようだった。たぶん、戦場では聞き取りくいとかそういった感じのものを出したかったのだろうが、もう少し聞き取りやすい音声レベルにしても良かったのではないだろうか。字幕も同様に。また、「？」と思ってしまう訳もあったように思う。トラックにビーコンを設置する時に「制圧しろ」と言われたり。
味方が死なないのはどうなのだろうか。自分のことに精一杯な感じだったので、これで味方に死なれたらたまったもんじゃないなとは思うが、FFをしてしまっても怒られるだけというのは違和感を感じる。極力カバーポイントに入る、自分の前に出ない、という配慮は良かった。
敵に関してだが、CoDシリーズのようにスクリプト制御を多用した作品だろうなと思っていたのだが、案外しっかりとAIが動いてくれてたのは良かった。横にいるのに気づかない、といったことは少ない部類に入ると思う。
シングルプレイヤーモードが良かった一方で、マルチプレイヤーモードは悲惨なことになっている。
プレイヤーはライフルマン、スペックオプス、スナイパーの3クラスから自分の好みのものを選び、それぞれに応じた武器をカスタマイズして戦場に出ることになる。最近の流れを踏襲して、武器、カスタマイズパーツは経験値に応じてアンロックされるタイプ。モードはTDMルールである「Team Assault」の他に、MAP独自のルールが多数準備されている。コンクエスト風の「Sector Control」や、一度死んだらそのラウンドが終わるまでリスポンできない「Clean Sweep」などなど。また、アチーブメントのような感じで成績に応じてイチイチ勲章をくれるのでモチベーションもあがる。問題なのはMAPの狭さと「サポートアクション」と呼ばれる支援の凶悪さ。
とにかく今作はMAPが狭い上に、リスポン位置がなかなか切り替わらないのでレイプゲームが多発する。これに加え、リスポン位置に「サポートアクション」を使って砲撃支援されるととんでもないことになる。「サポートアクション」とはCoD4で採用されたkill streakのようなもので、連続してkillすることで、任意の場所に砲撃支援を行ってもらったり、UAVを使って敵の位置情報をレーダー上に表示させてくれたりするもの。なので、
敵リスポン位置へ砲撃支援→連続kill数が増える→さらに上位のサポートアクションで砲撃→連続killが増える
といったことが頻繁に起こる。自分が強ければマルチプレイは楽しめるという認識はあると思うが、自分がレイプする側にまわって快勝した場合と、レイプされる側に入ってリスポン直後に殺されるというのを繰り返されることを比べると、リスポン後、速攻殺される不快感が大きく上回る。
他にも感じたことをあげてみると
･もっさりエイム
・ゲーム中にオプション画面にいけない
・倒されてラウンドが終わるまで待っている間は3人称視点の固定カメラで観戦
･待ちげー
・ラウンド開始時間が長い（クラス選択中もカウントされるのに、それでも10秒以上。ロード遅い人への配慮だろうが･･･）
一番終わってるのはレイプゲーになりがちなことだが、細かいところでも気になる場面が多々。なんというか、言葉にはできないが、一般的なPCゲームの水準に達していない。ゲーム中に設定を変えられないとか論外。
あと、待ちゲーなのに観戦中よく分からない視点で見なければいけないので、上で述べた「Clean Sweep」では、待ち時間が長い&見ていてつまらないという最悪な関係になっている。
しっかりとバランス調整をしようという姿勢だけが唯一の救いか。私としては、せっかく通常爆発物でのkillが減ったので、サポートアクションの砲撃支援も消してほしい気分。
もちろん、暇つぶしに遊べなくはない。国内プレイヤー数もそこそこであり、特に対戦に困ったということは今のところ起きていない。夜だと国内の24人サーバーが3つ4つ埋まる程度。さすがMOHといったところ。
一応PCゲームなので重さについて言及しておくと、CoDシリーズのように比較的軽めではないかと思う。割と綺麗だと思うので描画パフォーマンスは高めか。
個人的な感覚で言えば、BFBC2のマルチプレイとシングルプレイの面白さの比率が逆転した感じ。シングルは面白いのだが、マルチは正直何度も繰り返し楽しめるようなものではない。ちょっと触ったしもう良いか、程度。バランス改善パッチに期待か。
ただ、シングルプレイ自体も、昨今流行のCoDシリーズを意識しすぎてる部分があると思う。もう体力回復制でWW2を舞台にしたMOHを遊びたい人はいないのだろうか。独自路線で行くのか、CoDに流されて無難なものを作るのかが今後のMOHブランドの大きな焦点となると思う。今作では、CoDが映画といわれるのに対し、戦場のリアルさを描いたのがバッチリと決まっていたと思うので、私としてはゆっくりでも良いので独自路線に移行してほしい。
最後に、今作はシリーズファンというよりは新規の、ここ数年でFPSを始めた人に特に楽しんでもらえる内容だと思うので、マルチプレイ目的でないのなら遊んでみてもらいたい。だがマルチプレイ目的ならおススメできない。このまま何の対策もとられないと、人口的な問題でプレイ出来なくなる日が割と早い段階で来るだろうと思う。私は時間がなかったのでまだプレイしていないが、今作はMirror's Edgeのように「Tier1モード」と呼ばれるタイムアタックモードがあるので、グローバルランキング1位を目指してシングルプレイだけでもやり込めるんじゃないかと思う。
6/10
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