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プロゲーマーの「お金」に関する考察―その③ [ゲーム]

今回は格闘ゲームのプロゲーマー事情を考える。と言っても、FPS、RTSのようにわざわざプロゲーミングの情報を追っているわけではないので知識は多くない。おかしなところがあれば申し訳ない。その時はコメント欄で教えてもらえると有難い。




長らくプロゲーマーと言えばFPS、RTSのプレイヤーが代表的であったが、今の日本ではプロゲーマーと言えば格闘ゲーマーを思い浮かべる人が多いのではないだろうか。格闘ゲームをプレイしていない人にも知られていた「ウメハラ」選手がプロ契約を結び日本人初のプロ格闘ゲーマーになったのを皮切りに、続々と日本人プロゲーマーが誕生、様々なメディアでウメハラ選手やプロゲーマーが取り上げられたのが記憶に新しい。ネットでは「○○は年収1000万円以上稼いでいるらしい」「海外の大会は凄いらしい」等の様々な憶測、噂が立っていたが、実際のところどうなのか調べてみた。


年に一回行われるEVOのSSF4AE部門のgrand final。今年は2400人が参加。格闘ゲームでは一番盛り上がる大会だ。

まず最初にプロ契約の形態から。格闘ゲームでも、有名なプロチームに所属するか、もしくは個人でスポンサーと契約をすることでプロゲーマーとなる。例えば、アメリカの有名プレイヤー、Justin Wongや日本のももち選手は、CS1.6やSC2のプロゲーマーを抱えているアメリカで最大手のチーム「Evil Geniuses」と契約、所属しているが、ウメハラ選手はゲーミングデバイスメーカーである「Mad Catz」と単独契約している。また、他のジャンルと違って興味深いのは一つのゲームに絞って活動していないという点だ。今現在、最も盛り上がっている競技はスーパーストリートファイターⅣ:Arcade Edition(以下SSF4AE)であり、多くのプロゲーマーがSSF4AEの大会に参加している。実際、プロ格闘ゲーマーはほとんどがSSF4AEプレイヤーだ。プロゲームチームも「SSF4AE部門」の選手として選手を雇っていることが多い。にも関わらず、彼らは様々な種目の大会に出る。ストリートファイターシリーズの別タイトルだけでなく、MARVEL VS. CAPCOM 3(MVC3)や鉄拳シリーズ、ブレイズブルーなど、プレイタイトルは選手によってマチマチだ。他のジャンルではこのような事はまず起こらない。まれに同一ジャンルの様々なタイトルを器用にこなすプロプレイヤーはいるが(dktやfatal1ty)、きちんとタイトル毎に所属チームを移動したりしている。しかし、プロ格闘ゲーマーは至って普通に様々なタイトルをプレイしている。このことからプロ格闘ゲーマーは、どの種目をメインでプレイするか決めている程度で、基本的にはプロSSF4AEプレイヤーでなくプロ格闘ゲーマーとして契約しているのだろということが予想できる。

では、実際どの程度稼いでいるのか考えてみることにする。私の考えでは、日本で一番稼いでいるのはウメハラ選手だ。これは賞金額というより基本給の問題。ウメハラ選手は雑誌SPA!で「今のところ、ゲーム一本で食べている人間は僕くらいでしょうか・・・・・・。」と発言しているので、給料だけで生きていける程度は貰っていると考えて良いだろう。そんなウメハラ選手はいくら稼いでいるのか。残念ながら給与額は分かりそうにも無かったので、今回は今年獲得した賞金総額を試算してみる。

ウメハラ選手の公式サイトに2011年の戦績が載っているのでこれを参考にすると、賞金を獲得できたのは「ReveLAtions 2011」「NorCal Regionals 9(以下NCR9)」「Evolution 2011(以下EVO)」の3つの海外大会かと思われる。その他の大会は、ウメハラ選手が賞金をもらえる順位まで勝ち上がっていないか、もしくは賞金が出ていない(賞金が極僅かで提示していない可能性もある)という状況だった。この3つの大会の内、賞金を特定できるのは「ReveLAtions 2011」しかない。この大会でウメハラ選手はSSF4AE部門で見事優勝、賞金1万ドルを手にしている(SUPER STREET FIGHTER 2X(以下スパ2X)も優勝となっているが、スパ2Xの賞金に関しては大会のHPで触れられていないので賞金は無しか)。残り2つの大会は賞金額が参加者の人数により左右されるという格闘ゲーム独自の方式により特定が難しい。例えばNCR9は登録料$40払った上で部門ごとに$10のエントリフィーを支払って参加、1位はエントリフィーの総額の70%を、2位は20%を、3位は10%を受け取るという方式らしい。つまり3位までしか賞金は受け取れないということだ。そこでそれぞれの部門に何人出たのか調べてみたが、中々書いていない上にブランケットの情報が既に消されていたりとかなり苦戦した。そこで「ReveLAtions 2011」と同日に行われた「CEO2011」の情報を基に分析することにした。CEO2011の規模は、動画で見た主観だとNCR9よりいくらか規模は大きい。この大会はスパ2Xの大会こそないものの、SSF4AEの参加者は263人だったということが分かる。ウメハラ選手はNCR9のSSF4AE部門で優勝しているため、参加者がCEO2011と同じ263人だったと仮定すると263*$10*0.7で1800ドルほど。実際はもう少し規模は小さそうだったので、きりがいい1500ドルとしよう。EVOでのSSF4AE部門は、順位による配分の情報が見つからなかったので正確な数字は分からないが、EVOのスパ2Xの配分だと4位は7%となっているので、それを試算として使うことにする。今年のEVOは2400人が参加したと上で述べたが、1500人がSSF4AE部門に参加したと考えると、1500*$10*0.07でおおよそ1000ドル程度か。残りはスパ2X。NCR9の参加人数はCEO2011を参考にすると30人程度だろうか。これは30*$10*0.7で大体200ドル。EVOでの人数は、賞金配分の変化の境目である100人が登録したと想定すると、100人以上のエントリーで1位は全体の45%の額を貰えるので、100*$10*0.45で450ドルほどと想定してみる。これらを全て合算すると、大体1.3万ドルほど。ちょうど日本円で100万円くらいだ。

これに給与を加えた数字が収入となってくる!といいたいところではあるが、賞金が出てるように見えない国内大会にも参加しているところを見ると、さすがにマネーマッチと呼ばれるギャラを貰ってるのかと思いたくなる。e-sportsでは普通、大会を開く場合渡航費、宿泊費は払っても主催者側がギャラを渡すというのはあまり無いと思われる。その大会に出場できる時点で既に賞金獲得条件を満たしているような大会は存在するが、ギャラを払うくらいなら大会の賞金額に上乗せしようと考えるのが普通だ。しかし、その賞金額が表に現れないあたり、やはりマネーマッチを貰ってるのだと思う。他にもインタビューから本の帯といった面白いものまで、収入を得られそうな事案はいろいろあるが、それはFPS、RTSの回でも避けてきたので今回も割愛させていただく。




正直、憶測ばかりで申し訳ないが、それでも得られる賞金額があまり多くないということは分かってもらえたと思う。一時期、Justin Wongの年収が2000万円あるという話がネット上で広まったこともあったが、これは一つのトーナメントで$4000~$5000稼げるという記事とトーナメントは年間に50ちょっとという別の記事が合わさって「年収は最低2000万円」という話になっていったのかと思われる。

さて、では何故格闘ゲームの賞金額はこうも少ないのか。客観的に見ても視聴者数だけでSC2、LoLに迫る勢いがあるのにだ。理由としては、まずスポンサーが付きにくいという点だろう。格闘ゲームはアーケード版やコンソール版がメインである。一方で、賞金額の多いFPSやRTSはPCゲームが多い。PCゲームのプレイヤーにとってPCパーツやゲーミングデバイスは常に気になる存在であり、PCゲームと密着していると言っても過言ではない。PCゲーマーは当然のように高価なゲーミングデバイスを揃えるし、PCパーツも比較的高価なものを買う。そういった流れによりPCパーツメーカーやゲーミングデバイスメーカーはスポンサーとなって大会の後押しをしてくれる。一方でコンソールゲームはどうだろうか。確かに家庭用ゲーム機向けの周辺機器は存在するが、勝利にこだわる為に必要なものと言えばせいぜいアーケードスティックやハンドルコントローラーといった専用コントローラーくらいだ。あまり市場は大きくないと言えよう。金を出してくれるスポンサーが付かないからエントリーするのに金を取って、それを上位入賞者に分配するという形を取らざるを得なくなる。参加者により賞金額が変動するというのは不安定で怖すぎる。これを解決するには、韓国におけるstarcraftのプロリーグのように、圧倒的人気を得て、ゲームに無関係な会社にスポンサーになってもらうという方法くらいしかないように思う。それを可能にするのが視聴者数の増大だ。視聴者が増えればそういった会社がスポンサーに付く可能性が出てくる。幸い、e-sports市場にとって未開拓の地であった日本で格闘ゲームの大会の視聴者が驚くほど増えたのだから、まだ格闘ゲームシーンが拡大する可能性は残っている。ただ、正直ゲハブログ含め各メディアが取り上げたおかげで盛り上がった面も否めないので、今は一過性のブームで終わらせてしまうのか、それとも継続、発展させていけるのかの重要な分岐点に立ってるように思う。2012年も盛り上がれるかどうかが分かれ目だろう。



終わった。格闘ゲームにはもっとちゃんとしたコミュニティ、データベースが必要だと思った。SRKやEVOの公式サイトはやたら削除されてる記事が多い。過去のデータは結果だけで十分、そんな印象を受けた。それこそLiquidpediaのようなものがあれば便利なのに。あと、あまり賞金に対するこだわりが無いのだろうか。分配比率とかは書いてあるのに、結局いくらだったのかとか書いてない。実際、エントリーフィー制度が普通になってるところを見ると、プロ同士の試合というより、みんながお金払って遊びで参加してる大会にプロも混じってるって感じなんだろうか。確かに、PCゲームの世界ではメジャー大会は招待制が結構あって、招待制じゃなくても勝てないの分かってるからプロかセミプロレベルのプレイヤーしか参加しないという状態。格ゲーのトーナメントはLANパーティーのBYOCトーナメントみたいな感じか。それはそれで楽しそうだ。
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